Zero
夕暮れ
空がオレンジに輝く瞬間、俺は思わず教室の窓から身を乗り出し見下ろした。
いつもと変わらない風景、いつもと変わらない空なのに今このチャンスを逃すなと、本能的に身体が動いて、机の上に置いていたカメラを振り向きもせず手探りで掴み取った。
一見どこかの低俗パパラッチのようにカメラを縦横に構えては何度もシャッターを押していたのだ。
俺の視線もカメラもたった一点に集中した。
彼は、オレンジに輝く空をバックに綺麗に美しく空に弧をかいていた。
「空でも撮ってたか?」
カタンと背後から音がしたので振り替えると、聞き慣れた声とともに修二の姿が現れた。
「…いや、あれ」
俺は顎先で僅かに窓の外を示したが、今の修二の位置からは見えないのは明らかだ。
不思議そうに眉を寄せた修二が俺の方へと歩み寄るが、俺はまた厄介な相手に見つかったと言わんばかりに溜め息が零れた。
「あー…三年の有川さん?」
「まぁ、な。知らないけど」
知らないというのは半分嘘だった。
名前くらいは聞いたことがあるが、実際の人物が誰だかわからなかった・・というのが正しいところ。
確かこないだの陸上競技で優勝したって話を、最近聞いた気がした。
高飛びの選手だったわけか・・
「優秀な人だぜ、あの人は・・・勉強も出来るみたいだし、あーやってキレイに空に舞うんだ。
まだ帰らねぇの?」
含み笑いを口元に浮かべながら修二は告げた。
「帰るよ、もう帰ろうと思ってたところだ。」
「そっか、なら久しぶりに飯でも食ってかね?」
「誘ったからにはお前のおごりな」
持っていたカメラをケースにしまうとズボンのポケットに携帯を突っ込み帰りの支度をはじめた。
「はいはい、まぁ今日は金あるし奢ってやるよ。ってかお前朝カメラなんて持ってたか?」
「橘せんせーに借りた。返してくるからお前外で待ってろよ」
そう言うと。ケースを抱えて俺は急ぎ足で職員室へと階段を駆け下りた。
教室を出る際に修二が「分かったよ」とだけ言ってるのが聞こえていた。
いつもと変わらない風景、いつもと変わらない空なのに今このチャンスを逃すなと、本能的に身体が動いて、机の上に置いていたカメラを振り向きもせず手探りで掴み取った。
一見どこかの低俗パパラッチのようにカメラを縦横に構えては何度もシャッターを押していたのだ。
俺の視線もカメラもたった一点に集中した。
彼は、オレンジに輝く空をバックに綺麗に美しく空に弧をかいていた。
「空でも撮ってたか?」
カタンと背後から音がしたので振り替えると、聞き慣れた声とともに修二の姿が現れた。
「…いや、あれ」
俺は顎先で僅かに窓の外を示したが、今の修二の位置からは見えないのは明らかだ。
不思議そうに眉を寄せた修二が俺の方へと歩み寄るが、俺はまた厄介な相手に見つかったと言わんばかりに溜め息が零れた。
「あー…三年の有川さん?」
「まぁ、な。知らないけど」
知らないというのは半分嘘だった。
名前くらいは聞いたことがあるが、実際の人物が誰だかわからなかった・・というのが正しいところ。
確かこないだの陸上競技で優勝したって話を、最近聞いた気がした。
高飛びの選手だったわけか・・
「優秀な人だぜ、あの人は・・・勉強も出来るみたいだし、あーやってキレイに空に舞うんだ。
まだ帰らねぇの?」
含み笑いを口元に浮かべながら修二は告げた。
「帰るよ、もう帰ろうと思ってたところだ。」
「そっか、なら久しぶりに飯でも食ってかね?」
「誘ったからにはお前のおごりな」
持っていたカメラをケースにしまうとズボンのポケットに携帯を突っ込み帰りの支度をはじめた。
「はいはい、まぁ今日は金あるし奢ってやるよ。ってかお前朝カメラなんて持ってたか?」
「橘せんせーに借りた。返してくるからお前外で待ってろよ」
そう言うと。ケースを抱えて俺は急ぎ足で職員室へと階段を駆け下りた。
教室を出る際に修二が「分かったよ」とだけ言ってるのが聞こえていた。