彼と彼女の方程式
予習
1
暖かな春の昼下がり。
やわらかな風がそっとあたしの頬を撫でる。
あたし、月島 遥(ツキシマ ハルカ)は学校の屋上でお弁当を広げていた。
隣でフェンスに寄りかかり青空を見上げて何かをボソッと呟く男。
『はっ?まっ…また??
っ…信じらんない!!!!』
耳を疑う一言にあたしは勢いよく、男を見上げた。
珍しく上手く焼けた卵焼きを口に運ぶ途中だった。
その勢いに箸から落ちた卵焼きは見事アスファルトと一体化した。
『あぁっ!!!…卵焼きがぁっ!!!』
せっかく上手く出来たのに…。
その原因となった男を再び睨んだ。
「なんだよ…その目は。俺のせいじゃないだろ?それは…。」
『…湊のせいだもん。びっくりする事言うから……』
あ〜あ…。
あたしの卵焼き…。
無惨な姿になった卵焼き。
「…諦めろって。」
そう言ってゆっくりあたしの隣に腰を下ろす。