彼と彼女の方程式


「…遥。」


名前と同時に小さな溜め息が聞こえた。



「…ごめんって。」



えっ?


なんで?



「…そんな怒らなくてもいいだろ?ちょっとからかっただけだろ?」



あっ…。


湊はあたしが湊の言葉で怒ってると思ってるんだ…。


違うのに…。



でも、都合がいい。


『…怒ってないから。手、離して。』



嘘。
ホントは離してなんて思わなかった。



ドキドキしてた。


強く掴まれた腕。




「…嫌。」


『…はぁ!!?』


離されると思ってたのに、予想外の言葉にあたしは思わず振り返ってしまった。


「おっ、単純。」


『…なっ…!!』



振り返って見た顔は涼しげに笑みを浮かべていた。


ただ目は笑ってなかった。


怖っ!!と思ってまた首を元に戻そうとしたら視界が回った。



『ぅわ…。』


肩を掴まれ無理矢理向かい合う形に変えられた。



「…俺、何かした?」



『…っ!!』


肩を掴まれたまま、じっと見つめられて、あたしはただ首を振った。


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