彼と彼女の方程式

「じゃあ、何で目合わせないんだよ？」


俯いて首を振ったあたしに不機嫌な声をぶつける。



でも、何て言ったらいいかわからない。


あたし自身、理解出来ていない事を人に、ましてやその原因となる人物に伝えるのは難しい。




『…』


なんとも言えない空気。


「…具合悪いのか？」



先程の声色とは違い、静かな心配したような声に顔を上げた。



―…っ。


困ったような傷ついたようなそんな寂しそうな顔をしていた。



『ちっ…違うの、あたしが…勝手に…』


「勝手に…？」


あんな顔をさせてしまった事に罪悪感を感じて素直に言おうと思って口を開きかけた時…



―ガチャッ…。



後ろで玄関のドアが開くのがわかった。



「湊〜!!」


聞こえてきたのは可愛い女の子の声。


一瞬驚いた表情を見せあたしの肩から手が離れた。


そして、すぐに彼女のものと思われる名前を呟いた。


「明里…」と…。