アンバランスな恋心
「なんてヤツだ」
瑛ちゃんがそう言いながら
家の中に戻ってきた
頬を殴られたみたいで
赤く腫れていた
「瑛ちゃん! 大丈夫?」
「ああ、氷とタオルくれよ」
私はキッチンに行って
濡れタオルに氷を包んで持って行った
「あの男…狂ってる
桜さんの男バージョンだ」
『桜』という名に
私はびくっと身体を動かした
私の母親で
スーちゃんから好きな人を奪った
私利私欲しかない女だ
瑛ちゃんが欲しくて
スーちゃんを苦しめた
もう母親には会いたくない
向こうも会いたいとは思わないだろう
瑛ちゃんとは……
どうだか知らないけど
瑛ちゃんだってもう
お母さんとくっつくつもりはないと思う
じゃなきゃ
私は二人の結婚を許さない
スーちゃんが不幸になるような結婚なんて
許すはずがない