気まぐれお嬢様にご用心☆
「やっぱこれだよこれっ」
三人は墓参りが終わると千晶の提案により、かき氷屋へ走ることとなった。

この白い氷に色の付いたシロップがたまらないのだ~っ!
俺は決まって「レモン」だけど。
シロップに浸った氷をスプーンですくって一口頬張る。
幸せだなぁ~っ。

「単純すぎ……ねぇ~翼っ!」
楓が氷いちごを手にぼそっと言い放った。

「……うん、そうね」
氷メロンを手に翼は沈黙していた口を開いた。
かき氷も外気の暑さに負けて表面が溶け始めてる。

「翼……さっきから元気ないよ、どうしたの?」

「そんなコトないよ」

「確かに元気無いよな。だってほら」

手元のかき氷は外気と翼の手の熱で完全に溶けてしまっていた。

「一年前のこと……思い出していたの。あの時私がお母様の電話に出ていたら、死なずにすんだんじゃないかなって」

電話……?

「翼……もうそのことは」

「ううん、言わせて。千晶にも聞いててほしいから。お母様はお父様の不倫が原因でうつ病になっていたの。うつ病の人って波があって機嫌がいい時はいいんだけど、悪くなると普通の人以上にマイナスになっちゃうんだよね。そのSOSが死ぬ一時間前のお母様からの電話だった。でも私……体育の授業で携帯持ってなくて出れなかったの」

「それは翼だけのせいじゃないって。私の電話にもかかってきたけど出れなかったしさ」

「でも最後にかかってきたのは私だったから」
翼は下口唇を噛みしめた。

この時俺は「翼のせいじゃない」って言いかけてやめた。
彼女の心の痛みがすごくシンクロして伝わってきた。
親を亡くした悲しみは俺も同じだから……。
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