気まぐれお嬢様にご用心☆
「なんかあったのかな」

「伶のせいなんだから!」

楓の言葉でおおよその見当はつくが。

「それより、千晶ちゃんは彼氏とかいないの?」

カレシ……。
そんなもん居るわけないだろっっ!!!
つーか!!俺は『男』だってのっ!!
ああ……言いたいけど言えないのが辛い。

「い、いない」

「そ~なんだぁ!じゃあ、俺なんかどう?」

はぁ?

楓のどうなっても~という話のくだりがやっと見えた瞬間でもあった。
彼女に視線で助けを求めるが……もう手遅れだった。

「そんじゃ、私は邪魔者のようなので退散します~!ごゆっくり、お二人さんっ!」

「ちょっと待てよ~っ!!楓ぇ~っっ!!」

ああ……どうしよ。
唯一の頼りを失った俺は混乱するばかりであった。

「あ、いや……どうと言われてもですねぇ……私、あなたのことよく知らないし」

「警戒しているんだ」

そりゃするだろ……。
ああ~っ!この場をどう切り抜けたらいいんだぁ!!!

「そー言えばさ、伶さんは翼と何かあったの?」

「あ、そのこと。俺たち『許嫁』なんだ」

「いっ許嫁~っっ!!」

「でも親が勝手に決めたことで俺はウエルカムなんだけど~翼のガードが堅くてな。俺のアタックも実らずじまいってわけ」

翼の気持ちも分かる気がする。
こんなやつ……俺が女でもイヤだ。

「……」

「だから千晶ちゃん、俺の彼女になってよ」

だからって何だ!人をモノみたいに……。
俺は隙間産業かっ!

「なっ……」

「君のこと好きになっちゃったみたいなんだ……だから」

「まっ待ったっ!たんまっ!冷静になろう!」


なんだこのシチュエーション。
まさか……、危機を感じゆっくりと後ずさる。
しかし壁に追いつめられ逃げ場を失えば千晶に勝機はない。

キッ……kiss。

親父、お袋、ばあちゃん、じいちゃん、翼、楓、榊さん、そしてその他の方々!!
俺は『男』と接吻をしてしまいました。
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