気まぐれお嬢様にご用心☆
「今日で夏休みも終わりかぁ〜長いようで短かったな」
何度か危機にさらされつつも、俺は女装をすることを選んだ。

そしてやっとこの日を無事に迎えることとなったのだ!

「よしっ!今日を乗り切ればこっちのもんだぜ」

だが最後のハードルは高く厳しいものであった。



「夏祭り?」

「そうっ!千晶も行こう!最後の夏の想い出作りに!」

いつもの楓の誘いに断れない俺は行くことにした。
思い返せばプールも海も行けずじまいだった夏。(男とバレるため)
最後くらいはいい想い出を作ろう!と密に燃えていた。


「千晶ちゃん、かわいいよ」
紺地に蝶柄の赤い帯の浴衣を身にまとう俺。

「ありがとうございます……」
ロビーに着くと翼と楓と伶の三人はすでに支度を終え、待っていた。
ってやっぱこいつ(伶)も居るのか〜っ!居るとは思っていたけど実際にいるとテンション下がるな。
はぁぁ〜……。

しかも念のためとは言え、『女装』している自分が悲しくなってくる。

「翼……」
俺は翼の方を見た。目が合うと彼女は恥ずかしそうに目をそらす。
あの日から少しは元気になったみたいだけど。
前みたいにまた笑ってほしいと願っている。

「さぁ〜行きましょうか」

俺たち四人は楓の声に誘われように歩き始めた。


「私のことなら気にしないで。もう大丈夫だから」

先に声をかけてきたのは翼だった。

「夏祭……」

「えっ?」

「『男』の姿で行きたかったよ。お前と二人でな」

「千晶……」

彼女は俺の手を優しく握ってくれた。男の姿だったら〜っ!と後悔しても、それはもう後の『祭り』。
< 19 / 83 >

この作品をシェア

pagetop