気まぐれお嬢様にご用心☆
……この屈託のない『笑顔』がかえって怪しいんだよなぁ。
と言いつつも受け取る俺。

「……どうも」

どうぞと差し出されたものを突っ返すほど勇気のある人間ではない。

「ではっ!おやすみなさい。甘い罠にはトゲがあることをお忘れなく……ふふっ」

「甘い罠……?」

翼と正反対でやけにおっとりした子だなぁ。
と言う印象を抱きつつ、楓の怪しげな言葉も理解しないまま、千晶はもらったそれをまじまじと見つめ直した。

「チョコレートかぁ~久しぶりに食うなぁ」

人からもらったプレゼントは例えどんな人からであろうと、どんな意味があろうと単純に嬉しい。
綺麗にラッピングされた包装を解くと、金色のアルミに包まれたチョコレートが六つ入っていた。去年も確かいくつかもらったけど……どんな味だったかなんて覚えてない。それどころじゃなかったしなぁ〜。

「早速、一口」

千晶は口の中に放り込み噛んだ瞬間、なんだかやたらに辛いエキスが口の中に広がった。


「うわぁぁ~っっ!何だよこれっっ!」
千晶は辛さに堪えながら、口からそれを思いっきり吐き出した。その正体は……『わさび』。チョコレートの中に大量のわさびが仕込まれていたのだ。

「あいつ~!!絶対に許さんっ!!」
右手の拳は怒りに耐え忍んでいた。



「楓、どこに行ってたの?」

「ちょっとご挨拶に……ね」

「ご挨拶?」

楓は妙に悪戯ぽく微笑んだ。
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