気まぐれお嬢様にご用心☆
第十五章 バレンタインの憂鬱
『バレンタインデー』
街では二週間くらい前からピンクや赤のハートの装飾に包まれ、臨時のチョコレート販売も行われる。
チョコレートを買い漁る女性たち、最近では男性が女性に贈る『逆チョコ』というのも流行っているとかなんとか。
今年もこの日が遂に来てしまったのだ――。
「……一年……か」
時が過ぎるのは早いと今更ながらに思う。
桐生家に来てから一年が経つ。
門を出るとそう言って空を見上げた。
あの日も確か……こんな風に曇っていたっけ。
今日は日曜日。
二回忌ということもあって俺は例の場所に向かうことにした。
――それは紛れもない。
親父とお袋、去年亡くなったばあちゃんの墓参りだ。
……二年前。
「行ってきます~!」
「あ、千晶!待って!」
「なんだよ……忘れ物ならないぞ!五回もチェックしたんだからな」
「違うわよ。はい、これ、母さんから」
──チョコレート。
そっか、今日は……。
『バレンタインデー』だ。
小さい頃はもらうのにも抵抗はなかったが、(寧ろもらえるもんだと思っていたし)流石にこの歳になるとな。
恥ずかしいというか、照れくさいというか……。
「あ、ありがと」
ピンク色に包まれたそれはいかにも時間が無くてスーパーで買ってきました的な感じだ。
だけど──やっぱり単純に嬉しかったりはする。
まぁ……バレンタインデー翌日の半額になった、山積みの売れ残りをもらうよりかはずっとマシである。
俺は母から貰ったチョコレートをしっかりとしまうと、鞄をポンと叩いた。
「今日は仕事終わったら、車で父さん迎えに行かなきゃだから少し遅くなるかも。二十時までには絶対帰るから!夕飯待ってて!」
「へぇ──い。じゃ、今度こそ行ってきます!」
俺の両親は共働き。俗に言う『鍵っ子』ってやつだ。
「行ってらっしゃい」
……まさかこれが、お袋との最後の会話になるなんて──、
この時は知る由もなかった。
街では二週間くらい前からピンクや赤のハートの装飾に包まれ、臨時のチョコレート販売も行われる。
チョコレートを買い漁る女性たち、最近では男性が女性に贈る『逆チョコ』というのも流行っているとかなんとか。
今年もこの日が遂に来てしまったのだ――。
「……一年……か」
時が過ぎるのは早いと今更ながらに思う。
桐生家に来てから一年が経つ。
門を出るとそう言って空を見上げた。
あの日も確か……こんな風に曇っていたっけ。
今日は日曜日。
二回忌ということもあって俺は例の場所に向かうことにした。
――それは紛れもない。
親父とお袋、去年亡くなったばあちゃんの墓参りだ。
……二年前。
「行ってきます~!」
「あ、千晶!待って!」
「なんだよ……忘れ物ならないぞ!五回もチェックしたんだからな」
「違うわよ。はい、これ、母さんから」
──チョコレート。
そっか、今日は……。
『バレンタインデー』だ。
小さい頃はもらうのにも抵抗はなかったが、(寧ろもらえるもんだと思っていたし)流石にこの歳になるとな。
恥ずかしいというか、照れくさいというか……。
「あ、ありがと」
ピンク色に包まれたそれはいかにも時間が無くてスーパーで買ってきました的な感じだ。
だけど──やっぱり単純に嬉しかったりはする。
まぁ……バレンタインデー翌日の半額になった、山積みの売れ残りをもらうよりかはずっとマシである。
俺は母から貰ったチョコレートをしっかりとしまうと、鞄をポンと叩いた。
「今日は仕事終わったら、車で父さん迎えに行かなきゃだから少し遅くなるかも。二十時までには絶対帰るから!夕飯待ってて!」
「へぇ──い。じゃ、今度こそ行ってきます!」
俺の両親は共働き。俗に言う『鍵っ子』ってやつだ。
「行ってらっしゃい」
……まさかこれが、お袋との最後の会話になるなんて──、
この時は知る由もなかった。