婆ちゃんの恋物語
昭雄さんは、一礼して、縁側から、壊れた門柱に足を向けはった。
私、黙って、後ろ歩いてん。

「友達、居はれへんかったけど、誰か迎えに来はったん?。」

「千代ちゃん、熱が、出てて、。」

「仲がいいのが、なんや、羨ましいな。僕も、家焼けて、行くとこ無くなったら、置いて下さいな。しっかり、働きますさかい。」

「そんな、私も、焼け出されるかもしれません。」

「そんときは、家に来て下さい。みんな連れて、僕が、守ります。」


昭雄さんが、大きく大きく見えたわ。
お父さんみたいに、どしっとした、風格がそう見せたんやろなあ。


「ほな、また来ます。」
「手伝ってもろて、ほんま助かりました。
また、来て下さいね。」
そっと、手を出した私の手を両手でしっかり、握りしめてくれた。
ほんまは、抱きしめて欲しかったん。
でも、いくら、暗くなってても、道端やし、
お母さんが、何時飛び出してくるかわからんもん。
手を出すのが、せいっぱいやってん。

温かい手、お父さんの手みたいに大きいて、豆が手にあったわ。
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