婆ちゃんの恋物語
叔父さんとこで、お母さんを待ってよ。言うて納得させてんけど。
身の危険を感じたように、泣いて、引っ張られて行く。叔父さんが首から、お母さんのお骨壷を白い布地で、吊してな。
ぐいぐい、引っ張って行く姿見て。
目から、ポロポロ涙が、出て、お母さんにしがみついて、いつの間にか、泣いてたわ。
お母さんは、黙って髪の毛撫でながら、
「また、会えますさかい、そんな、泣かんとき。」
お母さんの最初で、最後の嘘やったなあ。
会えないまま、やったもんなあ。
なんで、来てくれへんのやろか、
毎日何となく、夕方は、壊れた門柱にもたれて、昭雄さんが、帰ってた道を、眺めてたんや。
「見て来てみ。」
お婆ちゃんが、ボソッと呟いて、わたしの背中を押してくれたんは、終戦5日目の朝になってたなぁ。
お母さんが、風呂敷にお米と豆を包んで手土産代わりに持たしてくれて。黙ってお婆ちゃんと送ってくれたん
会いたい、逢いたい、
何度も呟きながら、歩いててん。
見慣れた街並みは、消えて、微かに、残骸のように、道端に落ちた看板や、焦げた柿の木を見上げながら、不安になって行く気持ちを必死で抑えて歩いてましてん。
その一角だけ、焼け落ちてましてん。
少し先にある公会堂も図書館も、無傷で、あの日のままやのに、
大きな屋敷の土塀も崩れ落ち、真っ黒な柱と庭の焼けた桜の木だけが、名残を残してました。
「す、すいません。隣の隣の人は、何処に、」
隣の隣になる焼けた家に、人が、何かを掘り出してるのを見て、私、声にならない声で、声をかけててん。
「なんや、地主さんとこかいな。」
「はい。」
「人が亡くなったんで、二、三日前、親戚の人が来てたなあ。天満の方だったかなあ。」
「誰が、誰が亡くなったんですか?」
「誰か、わからへん程になってしもてたから、
戦争推進した人間は、痛くも、痒くもないんやで、何もわからん、わてらか゛、大損に、災難や。
家の婆さんも、焼けてもた。家に婆さんしかおらんかったから、
身の危険を感じたように、泣いて、引っ張られて行く。叔父さんが首から、お母さんのお骨壷を白い布地で、吊してな。
ぐいぐい、引っ張って行く姿見て。
目から、ポロポロ涙が、出て、お母さんにしがみついて、いつの間にか、泣いてたわ。
お母さんは、黙って髪の毛撫でながら、
「また、会えますさかい、そんな、泣かんとき。」
お母さんの最初で、最後の嘘やったなあ。
会えないまま、やったもんなあ。
なんで、来てくれへんのやろか、
毎日何となく、夕方は、壊れた門柱にもたれて、昭雄さんが、帰ってた道を、眺めてたんや。
「見て来てみ。」
お婆ちゃんが、ボソッと呟いて、わたしの背中を押してくれたんは、終戦5日目の朝になってたなぁ。
お母さんが、風呂敷にお米と豆を包んで手土産代わりに持たしてくれて。黙ってお婆ちゃんと送ってくれたん
会いたい、逢いたい、
何度も呟きながら、歩いててん。
見慣れた街並みは、消えて、微かに、残骸のように、道端に落ちた看板や、焦げた柿の木を見上げながら、不安になって行く気持ちを必死で抑えて歩いてましてん。
その一角だけ、焼け落ちてましてん。
少し先にある公会堂も図書館も、無傷で、あの日のままやのに、
大きな屋敷の土塀も崩れ落ち、真っ黒な柱と庭の焼けた桜の木だけが、名残を残してました。
「す、すいません。隣の隣の人は、何処に、」
隣の隣になる焼けた家に、人が、何かを掘り出してるのを見て、私、声にならない声で、声をかけててん。
「なんや、地主さんとこかいな。」
「はい。」
「人が亡くなったんで、二、三日前、親戚の人が来てたなあ。天満の方だったかなあ。」
「誰が、誰が亡くなったんですか?」
「誰か、わからへん程になってしもてたから、
戦争推進した人間は、痛くも、痒くもないんやで、何もわからん、わてらか゛、大損に、災難や。
家の婆さんも、焼けてもた。家に婆さんしかおらんかったから、