婆ちゃんの恋物語
あの日、そっと唇重ねたあの感覚は、昨日の事のように鮮明に覚えている。なんでや、なんでなん、悔しいて、悔しいて、
畳に爪を立てて、自分の爪から血が出たんすら、わからんかったわ
「昭雄は、爆風でやられたらしく、遺体は、綺麗でした。見つけたん、玉音放送聞く本の少し前に、知り合いが、連れて帰ってきてくれましてん。
寝とらんと、起きんかいと怒鳴りつけましてん
起きて来るわけないのに
妹には、話せずに、あんたにも、知らせずに、
そっと葬儀を済ませました。、これと、これをあんたさんに、思て、受け取ってくれはりますか。」
写真と懐中時計。
私は、声なんか出せない程、憔悴しきった顔してたやろなあ。
笑ってる昭一郎さんが椅子に座って、後ろに、昭雄さんと今、死と向き合ってると言う、お義母さん呼びたかった女性が、微笑んでる。写真、しっかり抱きしめて持って帰った。懐中時計は、
ほら、これや、なんやな、どんな宝石や着るものより大切で、肌身はなさず持ってるんや。
あれから、地主の奥さんがどないなったか、わからんまま、地主さんの家の後に家立ったけど、
誰も住まないまま、いつの間にか、ビルになっとったわ。
かわらんのは、公会堂と懐中時計と写真だけやわ。
私の初恋の話、忘れん話や。
懐中時計を優しく撫でながら、キミさんは、少女の顔をして、一筋の涙を流してる。
たぶん、彼女が、この縁側に通ってくる限り、
一筋の涙は、その度に流れるだろう、愛憐の涙は切なく美しいすぎて、眩しく感じたものだ
畳に爪を立てて、自分の爪から血が出たんすら、わからんかったわ
「昭雄は、爆風でやられたらしく、遺体は、綺麗でした。見つけたん、玉音放送聞く本の少し前に、知り合いが、連れて帰ってきてくれましてん。
寝とらんと、起きんかいと怒鳴りつけましてん
起きて来るわけないのに
妹には、話せずに、あんたにも、知らせずに、
そっと葬儀を済ませました。、これと、これをあんたさんに、思て、受け取ってくれはりますか。」
写真と懐中時計。
私は、声なんか出せない程、憔悴しきった顔してたやろなあ。
笑ってる昭一郎さんが椅子に座って、後ろに、昭雄さんと今、死と向き合ってると言う、お義母さん呼びたかった女性が、微笑んでる。写真、しっかり抱きしめて持って帰った。懐中時計は、
ほら、これや、なんやな、どんな宝石や着るものより大切で、肌身はなさず持ってるんや。
あれから、地主の奥さんがどないなったか、わからんまま、地主さんの家の後に家立ったけど、
誰も住まないまま、いつの間にか、ビルになっとったわ。
かわらんのは、公会堂と懐中時計と写真だけやわ。
私の初恋の話、忘れん話や。
懐中時計を優しく撫でながら、キミさんは、少女の顔をして、一筋の涙を流してる。
たぶん、彼女が、この縁側に通ってくる限り、
一筋の涙は、その度に流れるだろう、愛憐の涙は切なく美しいすぎて、眩しく感じたものだ