【短】君の瞳に…『ホタルの住む森 番外編』

正直なところ、かなり精神的に参っていたのだ。

不安と苛立ちの中ギリギリの精神状態の陽歌だったが、晃の優しい声を聞くだけで心が癒され凪いでゆくのがわかった。

「うん、大丈夫。私は元気よ」

『そうか、今何してる?』

「え…と、今ねG県の山の中…林道を歩いているわ。電波が悪いかもしれないから切れたらゴメンナサイ」

『随分遠いところまで行ったんだな。何でまた、そんなところに…』

「以前亜里沙が短大の友達と卒業旅行で来た事があるって言うから…。思い出深い場所だし念のため来てみたのよ。無駄足だったけどね」

『そう…。落ち込んでいるんじゃない?無理するんじゃないよ』

「ううん、それよりごめんなさい。何も説明しないで出てきてしまって……怒ってる?」

『いや…。逆に陽歌には謝らないといけない』

「謝る?なにを?」

『…電話でも何だからそっちに行くよ』

「なっ…いいわよ。診療所はどうするの?ちゃんと開けてよね。私のせいで何度も臨時休診にされるのは困るわ」

『クス…何度もって、陽歌と出逢ったあの日一度きりだろう? しかも夕方からの3時間ほどだけだし、あの雨じゃ誰も来なかったさ』

「それでも臨時休診には変わりないわ。これ以上はダメ」

『どうしても話したいから。それに…実を言うと、もう近くまできているんだよね』

「え…?」


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