【短】君の瞳に…『ホタルの住む森 番外編』
「暁、陽歌はおまえに何か言って出て行ったのか?」
「ん?…暫く帰らないようなこと言ってたぜ」
「しっ…暫く? 何処へ行くって言ってたんだよ」
「知らねぇ。すげぇ急いで出て行ったし、よっぽど父さんに嫌気がさしたんだろうぜ。
どっかに離婚届でも書いておいて行っていないか捜しておいたほうがいいんじゃねぇか?」
暁の言葉に顔色を変えてバタバタと寝室へと駆け込む晃を横目でチラリと流し見して、ニヤリと悪魔の微笑を漏らす暁。
「バーカ、嘘だよ。」
クスクスと笑いを堪えながら、日頃からかわれている復讐を果たしたと、今ほどの晃の顔を思い出してみる。
「亜里沙さんを捜しに出かけただけだって。…少しは反省しろよな。新婚なのにほったらかしで陽歌母さん可哀相じゃねぇか。
帰ってくるまで少しは放っておかれる寂しさでも噛締めてろよな。」
暁の忍び笑いを含んだ言葉は晃にはもちろん聞こえていなかった。