【短】君の瞳に…『ホタルの住む森 番外編』
「亜里沙…心配してくれるのは嬉しいけど、晃さんは私を代役として見ているわけじゃないよ。私と茜さんは二人で一人なの。彼は私の中で、ひとつになった茜さんと私の魂を愛してくれているのよ」
「そんなのわかんないよ。後悔しないの?晃さんが陽歌より茜さんを愛しているかもしれないのよ?」
亜里沙の言葉に陽歌は綺麗に微笑んで迷いのない瞳で見詰め返すと静かに言った。
「彼が茜さんを愛しているなら、私は幸せよ。だって、私は茜さんなんだもの。私の中には茜さんとして生きた記憶がある。茜さんとして晃さんに愛された記憶もある。
私は陽歌であり茜さんでもあるの。一人で二人分の人生を生きているのよ。それがどんなに幸せなことか…この感覚は亜里沙には分からないかもしれない。…でもね……」
ふわりと陽歌に幸せそうに微笑まれ、亜里沙は言葉を失った。
「私はとても幸せなの」
陽歌の迷いのない言葉に、亜里沙はもう何も言えなかった。
「わかったわ。もうこれ以上反対はしないけど、でも忘れないで。私は陽歌に幸せになって欲しいの。
だから…苦しい時、悲しい時、迷ったときは必ず私に相談してね?独りで悩まないで。私はいつだって陽歌の味方だからね」
亜里沙の言葉を思い出し陽歌は胸が潰れるようだった。
「亜里沙のバカ…自分こそ苦しい事も悲しい事も相談せずに、悩んだり迷ったりしている様子も見せずに独りで何処かへ行ってしまうなんて…ダメじゃない。そんなの、許せないよ。見つけたらただじゃおかないんだからっ!」
強い口調で言ってみても、心の不安はどんどん増す一方だった。