僕らに降る雨


「如月陸、出席!」


絵の具やペンキ、いろんな匂いのする美術室には部員の生徒がそれぞれに活動している。俺はそんなみんなの中には紛れず出席簿にサインをするとすぐに準備室へと入る。


「村上先生!」

ノックもせずにいつものように扉を開けると作業の手を止め扉の方を向く先生。

「…如月くん…、美術部の活動は準備室でするんじゃないのよ?」

俺を見るなり呆れた表情を浮かべる先生は、手に持っていた筆を置き扉へと近づいてきた。


「…だって、先生が準備室に籠もってるからじゃんか!」

「あのね、先生なんだから準備室に居たっていいでしょ?私の部屋みたいなものなんだから!」

「それにしては汚い部屋だけどね!」

クスっと笑いながら部屋を見渡し意地悪く言うと先生はペシっと俺の頭をたたいた。
俺はそれでも笑って先生を見つめた。先生も怒っていた表情を和らげクスっと笑い、俺を半転させ美術室へと向かせるとそのまま背中を押し準備室から出て扉を閉めた。

「如月くんは絵の才能あるから入部してくれるって聞いた時は嬉しかったのにな…」

俺を見てそう言うと、授業のままだった黒板を消し始める。俺はその姿を見ながら壁にもたれ窓から中庭を覗いた。


「絵は、いつか書くよ…。まだ書く気がしないだけで、書きたい絵があれば書くしね」

「…それならわざわざ美術部に入らなくてもよかったじゃない?書きたい時に書くなら個人の時間でもできるでしょ?も~、…ま、如月くんがいると楽しいけどね」


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