僕らに降る雨
「何って…さぁね~。でももっと絵を勉強したいとか思わないの?」
「思わないね。絵なんて勉強したって結局は表現の問題じゃん…。それに、俺はこれ以上のものを求めてないし…」
俺の未来は白いキャンパスと同じ。みんなは少しずつ色が付き始めてるけど、俺のはいつまでも白だ。
蛇口の閉まる音と一緒に先生のため息が漏れる。
「ま、その時が来るなら待つしかないわね~。逃さなければいいけどね!」
「うん」
いつまでも先生の下でいたい。先生を超えたくない。
美大に行けば上手くなれる変な自信があった。だから、このまま真っ白のまま先生のそばにいたかった。
「あ、そうだ如月くん、ちょっと聞いてよ!」
「ん?」
そこから先生の話が始まる。どうでもいい他愛もない話。近所の猫の話、昨日のテレビの話…
普段は人の話を聞いてもあまり笑ったりしない。どっかで感情が薄れてるんだって今までは思ってた。
でも、先生と話をしていると自然と笑ってしまう。心地がいい場所で、時間が流れていく…
俺もこんな人になりたい。でも、先生はいつまでも俺の先生でいてほしい。
だから、絵は書きたくない。