私が天使だったころ
朝になって克也が起きてきた。

「なんだ、早いな…朝ごはんある?」

「ごめん…作ってない」

「なんだよ、二日酔いか?未成年なんだから飲み過ぎんなよ」

克也はからかいながらコップに水を注ぐと私に渡してきた。
受けとった水を飲むと目から涙が溢れてくる。

飲み終えたコップを克也は受け取ると、私の顔を覗きこんだ。

「大丈夫か?」

克也が私の頬に触れた瞬間、激痛が走った。

「やっ!!触らないで」

思わず手をはたくと、克也は驚いた顔で手をひっこめた。

(怖い…)


涙が止まらなく溢れ出た。
克也は私の顔をじっとみているのに、私は克也の顔がみれない…

「わかった…俺仕事いくから。お前は寝てろ…」

思わず克也の服を掴んだ。

(克也が怖い…でも置いていかないで…)

「…いか…ないで…」

声が震えて上手く発音することすら出来ない。

「店行ったら、すぐ帰ってくるから」

私の頭に昨日の事が蘇る。
心臓がバクバクして、息がしにくい…。

(苦しい)

私は服を更に強く握る。

「昨…日も……った…」

「え?」

「昨日もそう言った!お願い!私を1人にしないで!!ホストなんて行かないで!」

言い放った途端息が吸えなくなった。
吸っても吸っても肺にはいってこない。

「…奈々?」

(苦しい…助けて…)

「おい!奈々しっかりしろ!奈々っ!」

克也は慌てて紙袋をとると私の口にあてる。

「奈々落ち着け、いいな。ゆっくり息を吸ってはく、これを繰り返すんだ。できるな?」

克也の言葉が微かに聞こえる。しばらく繰り返すと呼吸が落ち着いてきた。
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