私が天使だったころ
次の日、克也と生まれて初めて産婦人科にいった。
妊娠3ヶ月。写真には点のような赤ちゃんが写っていた。

克也はそれを嬉しそうに眺めている。

「絶対男だよな!」

帰り道、克也が写真をみながら言った。

「えー女の子でしょー?私に似て超美人になるよ」

「馬鹿いえ!俺に似てイケメンになんだよ。バレンタインなんてきっとダンボールで持ってくんぜ。あっ。でもおまえの遺伝子あるから無理か!」

「ひどーい」

車の中には笑い事が響き渡った。
克也は今日からホストに戻る。ちゃんと話をして、決められる期間まで仕事をしてやめると約束した。

家の表札を替えた。

<木田 克也 奈々>

それがまるで夫婦みたいで照れ臭い。

時間が0時をまわるとインターホンがなった。

(克也かな?)

「はやかったねー…」

ドアを開けると、そこには克也ではなく龍河と英紀が立っていた。

「や…」

慌ててドアを閉めようとしたが龍河が靴を挟んでいて閉まらない。
いきなり英紀に叩かれた。
逃げようとしたが、そのまま玄関に押し倒される。

「やめて!」

抵抗したが何度も殴られる。

「奈々ちゃん妊娠したんだって?」

「何でそれを…」

「店で克也が店長と話してたんですよ。それってあの時の子供ですよね?」

英紀にお腹を踏み付けられる。

「ぐっ…!」

必死にお腹を庇ったが、龍河に簡単に押さえつけられた。

「困るんですよ。妊娠なんてされると」

英紀が足を振り上げた瞬間、携帯の着信音が鳴り響いた。

「英紀さん!克也が戻ってきます」

龍河に言われて2人は慌てて部屋を出て行った。

「ただいまー」

克也が帰って来た。でも体が痛くて動けない。

「どうしたんだよ!奈々!」

状況をみた克也が駆け寄ってくると体を揺らす。

「痛っ…」

「奈々っ!」

「…龍河さんと英紀さんが…私…」

克也は全てを察したようだった。

「あいつら…!」

「克也!待って…」

私が止める声も聞かず、克也は部屋をでていった。
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