私が天使だったころ
「今暇?遊ぼうよ!」

「君いくら?3万でどう?」

−新宿
夜も明るいこの街は、むしろ夜の方が本当の姿だと思う位明るくて人が増える。
その分裏の顔もあった。

援交…まわりでしてる人はいたけど、体は売りたくない。
それにどうせ1日だけの関係だ。
私の生活に保証はない、でもこのままでは今日泊まる家すらない…。

「おい!奈々!」

急に名前を呼ばれてびっくりして振り返った。

「克也…」

後ろにいたのは高校のクラスメイトの克也。
克也は私が退学した時、担任を殴って退学になった。
見た目は明らかに遊び人だったが、克也は昔から私と仲がよかった。

「何してんのお前?もう12時だぞ?」

私は黙って俯いた。克也の後ろには数人の男女がいた。

「家厳しいんだろ?いいのかよ」

「…家出した…」

俯きながらそう言うと、克也は黙りこんだ。
私は克也の顔が見れない。
克也は仲間に手で合図をすると私の頭に手を置き、ポンポンと頭を叩いた。

「いくとこあんのかよ?」

「………」

克也のため息が聞こえた。私が顔を上げると克也は

「どーせ行くとこねえんなら付き合えよ」

私は克也に手を引かれついていった。

新宿 午前0時
街はネオンで光り輝いていた。
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