私が天使だったころ
朝方になっても克也は帰ってこなかった。

それからは、あんまり記憶がない。
気がついたら私は病院の霊安室にいた。

覚えてるのは家の電話に警察から電話があったこと。

ただ…それだけだった。

「ねぇ…克也…なんでこんなに冷たいの?」

何があったのかすらわからない。
婦警がドアをノックして私を呼んだ。

「これ、彼の服にはいってたのよ」

渡されたのは小さな箱だった。箱には血らしきものがべったりくっついている。

箱を開けると中には指輪が入っていた。
ピンクのダイヤがついている。

指輪の内側には
<KATSUYA,NANA>と彫ってあった。

よく状況がわからないまま、私は部屋に戻っていた。

するといきなり部屋の鍵が開いて、部屋に誰かが入ってきた。

「えっ、英紀さん?なんで…?!」

「言ったでしょ。ここは僕のマンションなんですよ。マスターキーは僕が持ってるんです」

「でも何で突然」

「克也が亡くなったらです」

私はその言葉に動きをとめた。

「なんで…知ってるんですか…?」

すると英紀に後ろから突き飛ばされる。

「やぁぁっ」

英紀は煙草を吸い始める。

「逆らわないいい子だったんですけどね。あなたが現れるまでは…」

「………まさか」

「先にむかってきたのは向こうですよ。だからやり返したんです。すぐ動かなくなりましたよ」


「そんな…」

私は思わず部屋を飛び出した。

(克也は殺されたの?)
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