私が天使だったころ
『流産』
−心が痛い 息が苦しい
胸が締め付けられる…



部屋を飛び出して、私は気がつくとスーパーの前まで来ていた。

「あれ奈々ちゃん!どうしたの?」

声をかけてきたのはバイト友達の伊田 弘だった。

「あの…ね……」

私は理由を話そうとしたが、思わず口をつむった。

(話せない…)

頭が混乱していてわからない…私は指輪を強くにぎりしめる。

「とりあえず裏はいんなよ」

弘は何も聞かないまま手を差し延べてきた。
その手を掴もうとした瞬間

ズキンッ!!

「っあ!!」

お腹に激痛が走る。崩れるようにしゃがみ込んだが痛みがどんどん強まっていく、まるで体を引き裂かれそうな痛みに、そのまま地面に倒れ込んだ。

「どうしたんだよ!?奈々ちゃん!?」

「お腹っ…っ!」

(痛い!苦しいっ!)

まともに喋る事などできない。

「店長救急車!早く!」


しばらくしてサイレンの音がかすかに聞こえてきた。

「池谷さん、聞こえますか?池谷さん!
大丈夫ですからね。今病院に運びますからね」

薄れていく意識の中、なんとかその言葉だけは聞き取れた。

私はそのまま意識を失った。
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