私が天使だったころ
克也が私の肌に触れる。
服を一枚一枚脱がしていく手つきに迷いがない。

克也が私の身体に触れる度に、私の身体は反応していた。

『痛い』『気持ちいい』
雑誌のアンケートの言葉が頭に浮かんだけど、よくわからない。

恥ずかしくて死にそうだった。

「待って…」

克也が手を止めた。

「怖いか?」

私が首を横に振ると、克也はキスをしてきた。

「今日…克也に会えてよかった」

そう言って目を閉じる。
克也が中に入ってきて、痛みがわかった。
気持ち良いとは思えないけど、苦痛ではなかった。


目が覚めたのはホテルのモーニングコールの音だで、隣では克也が腕まくらをして寝ている。

その顔をしばらく眺めていると、克也が目を覚ました。

「何してんだよ?」

鼻を押しながら克也は微笑んだ。

「なーんでもないっ!」

私は急に恥ずかしくなって、ベットから出るとシャワーを浴びに行った。

私がシャワーから出ると、部屋にはルームサービスの朝食が並んでいる。
メニューはパンとスクランブルエッグとデザートのヨーグルト。紅茶の香りが部屋に漂っている。

「お前今日からどうすんの?」

私がやっとパンを1つ食べ終えた時、既に全部食べ終わった克也が聞いてきた。

「…わかんない。昨日は何にも考えないで出て来ちゃったから」


未成年の私には住み込みの仕事なんてできない。昨日は、ただあの家を一刻も早く出たくて、それだけだったからだ。

もしも昨日克也に偶然出会わなかったら、私は昨日泊まる所すらなかっただろう。

風俗や援助交際も今は『しない』なんて言えるけれど、実際どうだろうか?
そんなの世間を知らない子供のきれいごとで、遅かれ早かれ私はきっと手を出してしまうだろう。
家に戻りたくないなら、それしか道はない。
その事実が昨日わかった。

克也だって私と寝たかっただけなのかもしれない。偶然会ったクラスメイトを養ってくれるわけもない。
結局私は一人ぼっちなんだ…。

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