私が天使だったころ
しばらく黙って紅茶を飲んでいた克也が顔をあげた。

「一緒に暮らすか?」

私は驚いて思わずカップを落とした。
克也はすばやくカップを広って水で洗い、中に新しい紅茶を入れる。

「俺が暮らしてるマンションなら住んでいいぞ。ダチが援交なんて良い気しねぇし、お前だって帰りたくないんだろ?」

私はその言葉に涙が止まらなくなった。
慰める克也に今までの事を話し、涙が止まってからホテルをでた。


克也の家は新宿駅からタクシーで7分くらいの所でワンルームのマンションだった。
退学の事件で家を勘当された克也はホストをやっている先輩のマンションを借りているらしい。
克也もホストをしているらしく、財布にはお金がいっぱい入っていた。

「ほら。これで必要な物買い揃えてこいよ。」

克也は私に財布から数枚の1万円札をとって私に渡して来た。

「え…悪いよ。お金なら私、働くから!」

「身分証も何もないのに、すぐにバイトなんてみつかんねーよ。それにバイトだって証明写真とか履歴書とか揃えるもんあんだろ」

「でもこんないらないよ」

「制服じゃ街中なんて歩けないだろ?
服とか靴とか下着とか鞄とか一通り揃えとけ。そんぐらいの金なんかじゃ俺は全然困んねぇから、バイトして余裕できたら返せばいいよ」

たしかにお金は必要だ。
私はお金を財布にしまった。


夕方になって克也は仕事にいった。
私はブラブラと新宿を歩きまわり、服や鞄などの必需品や履歴書などを買った。

深夜まで克也は帰ってこなくて私はソファーで寝てしまった。

朝起きた時、克也はベットで眠っていて上着からは香水の匂いがした。
克也が起きてから色々な話をして、仕事が休みの次の日曜日に一緒に出掛ける約束をした。
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