私が天使だったころ
「おおー!すっげ!めっちゃ綺麗じゃん」

苦手とか言ってたくせに、克也は窓に手をあてて外をみていた。

「あっ!奈々、みてみ!」

克也が指を指したのは1つ前の観覧車で、カップルがキスをしていた。

「やっぱり観覧車とかでキスする人いるんだねー…あれって恥ずかしくないのかな?」

「周りなんか見えてねぇんじゃね?」

そんな話をしていると、私達の乗っているのが調度真上になるところだった。
顔が赤くなっていくのがわかって、私は思わず顔をそむける。

「奈々」

「え?」

私が克也の方を見た瞬間、克也が私にキスをしてきた。この間のホテルでしたような甘いキスじゃない、息をするのも大変な位の激しいキスだった。

唇が離れた。乱れた髪を直すと左手に指輪がはめられていた。
それはさっき私がみていたあの指輪だ。

「克也?これ…」

「欲しそうにみてたからな。さすがに俺は仕事で指にはつけらんねぇけど、ペンダントにはしとけるし。気に入ったか?」

私は何回も頷いた。克也からの初めてのプレゼントがすごく嬉しくてたまらなかった。

「克也…私、克也の事好きになっちゃったの!」

「知ってる」

私は初めて自分からキスをした。愛しくてたまらなかった。

克也を誰にも渡したくない。
私が愛していきたい。
離れたくない。


生まれて初めてそう思った。きっと初恋なんだと思う。


それから克也はいつも通り、朝は寝て夜は仕事という生活だった。
会話なんてほとんどできなかったけど、朝ソファーで寝てる克也の首にかかってる指輪をみたら嬉しかった。
私も1日に何回も指輪を眺めていた。

ただのシルバーリングがエンゲージリングみたいで嬉しくて堪らなくて。

何もなかった克也のマンションは次第に部屋らしくなっていった。
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