あの音が聞きたくて
麻衣からの連絡を受けた後、
健治はまず気持ちを落ち着かせようと心掛けた。

「冷静になれ、まだ耳が聞こえなくなると
決まったわけじゃない。

そうだ!もしかしたら何かの間違いかもしれない。

誤診という可能性もあるぞ」

と、色々な想いが心の中を巡り回った。

会社に直帰することを伝え、

急いで家へと向かった。

家に着いた時、まだ時計は
夕方の5時を指していなかった。

健治にとって、明るい内に家に帰るのなんて、
何ヶ月ぶりなことだろうか。
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