あの音が聞きたくて
奪われていく音
夕方過ぎにリオンは目覚めた。

いつものことだが、寝ぼけている。

「ねーちゃん、ママは?」

と、希美に声をかけようとする。

が、うまく喋れない。
いや、正確には自分が
喋っているのかがわからない。

いつも口に出している
声=音が聞き取れないのだ。

「何かがおかしい。」

わずか一歳数ヶ月。

身長は80センチそこそこの小さな身体の男の子は

何かを感じとった。

しかし、その「何か」が
何なのかはわからない。

それを周りに伝えることも出来ない。

「アーアーアーアー!」

とにかく大声をあげることしかできなかった。
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