あの音が聞きたくて
リオンの様子は日に日に悪化していった。

ガッシャーン!

その日、リオンはとうとう、
コップを割るようになってしまった。

コップの割れる高く大きな音なら
リオンは感じ取ることが出来た。

正確な音まではわからない。
しかし、何かの音を発している。

彼にはそれがわかった。
そして、今の彼にとって
そのことだけが、音を感じ取る
唯一の方法だった。

「リオーン!」

麻衣が慌ててリオンにかけよった。

幸いなことに、リオンに怪我はなかった。

しかし、すぐに次のコップを割ろうとしている。

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