あの音が聞きたくて
いつも診断を担当している先生は
すぐにリオンの異変に気付いた。

「先に聴覚の検査をしましょう。」

そう言って看護婦さんに何か指示を出している。

さいわいなことに、ここは田舎にある小さな病院。

都会の大病院と違い細かい融通がきき、
待ち時間もほとんどない。

麻衣は田舎が好きだった。その理由の一つである。


聴覚の検査が終った後に、
いつも通りの健康診断が行われた。
一通り全ての診断が終わってから、

麻衣はリオンと一緒に医者の所に呼ばれた。

医者からの説明を聞く。

【進行性感音性難聴】
と告げられた。

進行性感音性難聴とは、
難聴が両耳に徐々に進行していく病気である。

多くは原因不明で、治療治ることは少なく、

場合によっては耳が聞こえなくなることもある。
麻衣の背筋が凍り付いた。
今にも泣き出しそうになったが、
隣にはリオンがいる。
弱音を見せるわけには行かないと、
グッとあふれ出そうになる涙を我慢した。

とりあえず知り合いの耳鼻科専門の病院を紹介してもらい、
明日伺うことになった。

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