あの音が聞きたくて
その日に起きた一件は、
すぐに健治と希美にも伝えられた。

そしてすぐに家中のコップは
食器棚の高い所にあげられ、
リオンが手が届く位置には
プラスチック性のコップが置かれた。

それでもつい油断して
ガラス製のコップを
リオンの目の届く所に置いてしまうと、
彼はそれをみるとすぐに
投げ付けて割ってしまう。

彼の中で、音の出るコップと音の出ない
コップがはっきり区別されていた。

そして、音の出るコップを割ることが
彼にとってのストレス発散となり、
わずかな安心を与えてくれていた。
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