いつか王子さまが
「プリンス!」
あんたの名前は、それ以外に考えられないわ。
新しい環境にきても、ゲージの中でマイペースにふんぞり返って(みえる)彼は、まさに王子のごとしであった。
そして、この日を境に咲子の生活は変わった。
「おはよー、プリンス」
「ただいま、プリンス」
咲子は、まっしぐらに家に帰っていく。
大切なプリンスが待っているのだ。
咲子は満面の笑みを浮かべながら携帯をのぞく。
もちろん、待受画面はプリンスだ。
スキップしながら帰っていく咲子に、彼氏ができたと社内では噂が飛び交った。
咲子は、プリンスがいれば幸せなのだ。
プリンスにエサを出すとき、
「ははぁ~」などと皿を抱えてお辞儀したりもする。
バカみたいなのは承知だが、プリンスが鼻をひくつかせ、「よきにはからえ」とでも言い出しそうな態度がたまらないのだ。
さて、ご飯も終わったし…
「プリンスのおな~り~」
咲子は、毎晩、プリンスをゲージから部屋に出して散歩させることを日課にしていた。
たいてい、プリンスは偉そうに少し歩いて座り込んだままだが、ゲージの外に出ることは楽しいようだ。
今日も、いつものようにプリンスを部屋に出していた。
ドンドン!
玄関が騒がしい。
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