限りある世界で、僕たちが出来ること。
『…いかがだったでしょうか?以上で昨日の出来事を終わりにします。野球部放送係の豊間根水城(とよまね みずき)と、漆原智也(うるしばら ともや)でした。今週は俺たちの番なんで、トークネタや感想など、ガンガン募集していま~す。問い合わせ先は、2年1組みーちゃんマネこと、豊間根水城までお願いしま~す。…それでは今日の予定を。ともちゃん、お願いします』
『はい。今日の予定はとくにありませんが、えっと、ジャスト1ヶ月前に、俺らは無事17歳になりました。因みに今日のバースデーは国語担当の前田千恵先生です。おめでとうございます。放送は以上で終わりにします。それでは今日のBGMをお聞き下さい』
それは俺の好きなギター調の少し激し目な曲だった。
そうだ。朝なんだから、明日はバラード系なものにしようかな。
そう。明日。
「明日っ!?」
「なんだよ。ミーマネ」
ちっ、省略しやがったな、こやつ。
「明日ってさぁ…」
「あぁ、明日か。明日は1泊2日の特別合宿だ。会場はそこの清流館」
いけない。俺はすっかり忘れていた。最悪の筋トレ日和が笑顔で待ち伏せしているのを。
「……いやだぁ…」
本当に俺は頭を抱え込んだ。だって、だってさ、「…また、去年来たヤツ来るんだろ。あの筋肉マッチョ……」
「そうだな…」
相方の智也は、放送部担当の先生愛用の眼鏡ケースから眼鏡を取り出し、俺にかけさせた。
「お前を取りにくるぜ、ミーマネ。くれぐれも近寄らないことだな」
意味ありげな言葉を含み、俺らは放送室を後にした。
これから起こる、将来に導かれる近未来は、もうすぐそばに近づいていた。俺たちがそれを知るのは、もっと自覚してからになる。