人間ペットショップ
「んあ~食った、食った。」

タカユキは伸びをしながら言った。


二人の間のテーブルの上には、出前ピザの空箱があった。



コウジの料理で、冷蔵庫の中が空になっていたため、さちは、仕方なく、出前を取ることにしたのだ。


「思わぬ出費だわ…はぁ…」


さちがそう呟いていると、タカユキが前に乗り出し尋ねた。

「あのさ…あんたの事情はわかったんだけど、それと俺らとなんの関係があるわけ?」

「恋人役をやって欲しいのよ。両親を騙すために…」

「騙した後はどうするのさ…」

「え…?えっと…」
「その後、俺とあんたが結婚するっての?」


タカユキは小馬鹿にしたように言った。

そ…そうね…考えてなかったわ…

さちは、考えを巡らしながらなんとか声を出した。

「で、でも…その後に別れたことにすれば…」

「別れる?」

「そ、そうよ。私の親に挨拶した後…二人の中が上手く行かなくなって……それで別れたことにすればいいのよ!」

「…うん…そうか。そうだな。」


…我ながら名案ね!これで、あとは親との挨拶だけね……

さちは壁にかけられたカレンダーを光る目で見ていた。


その向かいでタカユキは頬杖をついて、何かを考えているようだった。
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