人間ペットショップ
「………も、もういいわ。」
感心と呆れが半々といった感じで、さちは店員の話を止めた。
店員は、彼女が怒っていないことに安心すると、笑顔を浮かべた。そして、

「それでですね…お客様…商品を購入なさいますか？」
と、本題を尋ねた。
「え？あ～…えっと、そうね…」

さちは、最初は怪しんでいたものの、この不思議な店に順応し始めていた。だが、まだ人を買うということに決心できずにいた。

「ごめんなさい、まだ決心がつかないので…」
「そうですか…」

そして、さちは、客を逃したにも関わらず悔しそうでない店員に対して、小さく礼をすると店を出た。
「また…お越し下さい。」
最後に店員が後ろからそう言った。

さちの足が地に着いた時、彼女は見覚えのある道に立っていた。

あれ？ここは…？あの角…？

彼女が後ろを見ると、そこには見慣れた彼女のマンションがあった。

あの店は？、え？…夢なのか…な…
ブルルルルッ！

彼女の携帯のバイブが思考を遮った。着信画面には、彼女の母親の名があった。
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表紙・目次

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