運命のヒト
健二が鳶になるって言ってたし、俺も鳶になるつもりだった・・・。

でも今日、おっちゃんに言われたんだ。


「優士、卒業したら、俺の会社で
 働かないか?」

そう言われて、俺は迷わずお願いしますと頭を下げた。


おっちゃんから、腕がいいとか言われて嬉しかったのもあるけど、何より、おっちゃんの会社で働けることが嬉しかった。

水嶋に渡す指輪を買うためだけに始めた仕事だったけど、いつの間にか俺にとって、おっちゃんの会社はなんか特別なものになっていた。


だから、嬉しかったんだ・・・。


「いずれ大阪に行くことになるけど・・・」

おっちゃんは少し言いにくそうに話し始めた。


今、大阪に支店を出す計画が着々と進んでいるらしい。

そして、いずれそこに行って学んでほしいと言われた。


「何で、俺が?」

意味が分からなかった。

「優士には、俺の後を継いでもらいたいと
 思ってる」

「俺がおっちゃんの後を・・・?」


思えば、おっちゃんの後を継ぐ人はいなかった。

息子が2人いるけど、どちらもおっちゃんの会社を継ぐつもりは全くないらしく自分のやりたいこと、進む道を決めていた。


「優士がよかったらやけどな・・・」

おっちゃんは寂しそうにそう言った。

俺は、俺でいいなら後を継ぎたいと思った。

俺はおっちゃんのことを尊敬してるし・・・。


「俺、おっちゃんの後を継ぎたい。
 でも、大阪のことはちょっと考えさせて
 くれ・・・」

俺がそう言うと、おっちゃんはすごく喜んでくれた。


「また、お前の両親にも話さないとな」

おっちゃんはそう言ってくれた。

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