運命のヒト
「桃子~、今日は指輪見せびらかして
 こんのかぁ~?」

健二がそう言い出して、いつものアレが始まると思っていた矢先だった。

「もう、うんざりなんやろ~?」

水嶋の冷たい言葉。

なんか、いつもと違う気がすんのは俺だけか?

健二は何も気にしてない様子で水嶋を見ていた。


一瞬、健二の顔が曇った。


「・・・ってか、指輪は・・・?」

「・・・失くした」

一瞬、何が起こったのか分からなかった。

健二、今なんて言った?

水嶋、何を失くしたって言った?


俺は、一人呆然としていた。


健二のため息、それもキレているため息。

水嶋が失くしたと声を強くしている。

お前らは何の話をしているんだ?

つーか、何を失くしたって言ってるんだよ?


俺は、わけが分からず、ただ、水嶋と健二の顔を交互に見ていた。


「はぁ?お前、何ゆぅてんや!
 ちゃんと探したんか?
 あれはお前にとって大事なもんやろうが!
 宝物だって言うとっただろ!?」


・・宝物・・・。

水嶋にとって宝物って何だった?


俺にとって宝物は・・・。


水嶋、お前だったよ・・・。

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