運命のヒト
下駄箱に背を向けているから、下駄箱の方は見えない。


水嶋はもう下駄箱に来たのだろうか?

俺はただ道路に目を向けてボ~っとしていた。

水嶋が来てくれたらどういう風に接したらいいんだろう?とか考える余裕すらなかった。


「・・・ゆぅ君?」

後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

聞きなれた声に、俺は振り返った。


「水嶋、遅ぇよ!」

不思議と俺はいつも通りだった。

そして、俺は水嶋の手を握った。

水嶋は目を大きくして驚いていた。


「何で、私のこと待ってるの?」

「一緒に帰る約束しとっただろ?
 今日だけは、守ってくれ!!」

自分で言っておきながら、今日だけって言葉が胸に突き刺さった。

・・・痛ぇな。


「ゆぅ君、私達、もう・・・」

「それは、俺ももう分かっとるし。
 今日だけやから・・・」

また今日だけって言ってしまった・・・。

「分かった・・・」

水嶋は一度、大森達のところに戻って、俺と一緒に帰ることを告げると、また俺のところに来てくれた。


「よし、帰るか!」

俺はそう言うと、また水嶋の手を握った。

「ねぇ、何で私のこと待ってたの?」

水嶋、さっきからそればっか・・・。

「俺ら、今日一緒に帰るって言うてただろ?」

「だけど・・・」

「分かっとる。今日だけやから。
 俺ら、もう別れるんやしな・・・」

俺、また今日だけって言ってしまった。

これで3回目だしな・・・。

悲しくて、笑えてきた。

俺達はそのまま一緒に帰ることにした。


水嶋の目はどう見ても泣いた後で、赤く、腫れていた。

その上、手は相変わらず冷たくて、守ってやらねぇともろく崩れそうだった。


だけど、明日になれば俺は・・・水嶋のそばにはいてやれねぇんだよな・・・。


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