運命のヒト
・・・・・手が離せねぇ。

水嶋も、俺の手を離そうとしない。


やっぱり、俺が離さないといけない。

そう思った。


水嶋の小さな手をそっと、離した。

冷てぇ・・・。


水嶋の小さな手を俺の両手で包み込んだ。


明日から笑えよ?

いろんなことに負けんなよ?

俺がずっと守ってやりたかったけど・・・。


言いたいことは山ほどあった。

ありすぎた。

だけど、今、口に出して言えることは一つもなくて。


やっと、別れを決意した。

もう、泣かせたくないし、これ以上苦しませたくねぇから。


だけど、やっぱり別れたくねぇ・・・。


別れたくねぇ・・・。

油断すればすぐ、口に出そうだった。


さよならの言葉を何も言わずに、そのまま俺は水嶋と別れた。


俺が手を離すと、水嶋は家に向かって歩いて行った。

もちろん、振り向くことはなく。

俺は、ただ水嶋の後姿を見送っていた。


涙が出そうだった。

だけど、堪えた。


きっと、水嶋も堪えているとそう感じたから。


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