運命のヒト
「神田、ちょっと、いいか?」

俺がそう言うと、神田は小さく頷いた。


「この前は言い過ぎた。
 悪かった・・・」

俺はそう謝り、頭を下げた。

「・・・この前?」

「この前っつ~か、かなり前やけど、俺、
 神田のこと怒鳴りつけたり手ぇ出したり
 しただろ?あん時は悪かったな・・・」

俺が神田を傷付けたから・・・。


「もういいよ、それに、それは
 私が悪かったんだし。
 私の方こそゴメン・・・」


金森達を使って、神田は水嶋のことをシメた。

俺はそのことを健二から聞かされるとマジギレして、神田を引きずってきて手を出した。

そして、最低な言葉を投げつけた。

胸ぐらをつかんで殴ろうとした。

その手は健二によって止められたけど。


消えろ・・・。

人に言ってはいけない言葉を吐いた。

俺の前に現れるな・・・。

その言葉通り、神田はあの日から俺の前には一度も現れなかった・・・。


最低・・・。

そうも言ったよな。

最低なのは俺の方だよな。


俺はあの日、神田のことを傷付けた。

心に大きな傷を付けた。

傷は一生消えない。


許して欲しいわけじゃない。

だけど、せめて謝りたかった。


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