運命のヒト
「俺が言うことじゃねぇけど、自分のこと
 大事にしろよ?
 もう、アホなことすんなよ?」

俺がそう言うと、神田は目から涙をこぼしながら何度も頷いた。


「俺、神田と一緒におって楽しかった・・・。 
 神田に幸せにしてもらったし。ホンマは
 俺が幸せにせないかんかったけどな・・・」

「私、優士と一緒にいて幸せだったよ!!」

神田はそう言うと、そのまま帰ってしまった。


「美鈴、あれな、嬉し泣きやで!!」

ずっと黙って見ていた健二が口を開いた。

「なら、いいけどな・・・」

少しでもいいから、伝わってほしかった。

俺達が付き合ってきた、5年間は決して無駄ではないことを・・・。


好きだったとは言えなかった。

それは、俺なりのケジメなのかもしれない。


放課後は、いつも健二と下駄箱にいる。

そして、あいつを見送ると、俺は帰る。


「優士って、ストーカーだったんやな(笑)」

健二は毎日そう言って俺をからかう。

「ストーカーじゃねぇし・・・」


今日も無事に、あいつは帰って行った。

一度も目を合わすことはなかったけど。



俺は、足取りが軽かった。


今日は、行けそうだった。

< 140 / 177 >

この作品をシェア

pagetop