運命のヒト
つーか、健二もいねぇし・・・。

どこ行ってんだよ、あいつは。


俺は迷わず、水嶋に陰口を叩いている奴らのとこに行った。


「お前ら、あいつのことイジメてんの?」

俺がそう言うと、そいつらは顔を真っ青にして首を横に振った。


「あいつのことイジメとる奴って誰や?」

怒鳴ることなく、俺は静かにそう聞いた。


「別に、誰もイジメては・・・」

「へぇ~、みんなで陰口言うんは
 イジメじゃないんや?」


それがイジメじゃない・・・。

陰口を叩かれている方の身にもなれっつーんだよ。


そういう陰湿なんが一番、きついってことも知らねぇのかよ!?


マジ、胸くそ悪ぃ。


「ちょ、お前らに言うとくことがあるんや」

俺がそう言うと、クラス中がシーンとなった。

「もうあいつのことイジメんなよ!!
 あいつは何も悪くないし。
 あいつに文句言い寄る奴おるんやったら、
 俺に言うて来いや!!」

こんなことしか出来ない・・・。

俺はあいつに何もしてやれない。


だけど、これ以上、あいつに辛い思いはさせたくなかった。



それから、卒業式当日まで、俺が教室に行くことはなかった。

教室の裏を通った時、クラスの女子数人と話しているあいつを見かけて安心した。

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