運命のヒト
「なぁ、優士・・・。
 お前って、まだ前の女のこと
 忘れられてへんの?」

「はぁ・・・?」

いきなり、正にそんなことを聞かれて俺は正直・・・戸惑った。


「何のことや?」

そうとぼけてみたけど、正には通じなかった。

「社長が言っとったぞ?
 優士には忘れられへん女がおるって・・・」

「おっちゃんかよ・・・」


おっちゃんは俺が今も変わらず、水嶋のことを想っていることを知ってる。


俺がどれだけ水嶋のこと好きかってことも。


俺は、中3の時、おっちゃんにバイトさせてくれって頼んだことがある。

おっちゃんは何でや?って俺に聞いてきた。


「好きな女に指輪を渡すため」

俺は、正直にそう答えた。


そして、おっちゃんは俺の気持ちを分かってくれて、働かせてくれた。


・・・・・一ヶ月。


生まれて初めて働いた。


金を稼ぐことがこんなに大変なことだとは知らなかった。


今まで、俺は金を無駄遣いしていたことにも気付けた。


そして、稼いだ金で指輪を買った。

まだまだガキで、そんな高価なもんじゃねぇけど・・・。


俺と水嶋のお揃いの指輪。

つーか、ペアリング。


俺は、その指輪を持って、水嶋に告白した。



あの日、俺達の想いは一つになった。


幸せな日々が続くはずだった・・・。




< 6 / 177 >

この作品をシェア

pagetop