運命のヒト
昼休みは当の昔に終わっていて、今は掃除の時間らしい。


俺達はそろそろ戻ることにした。


だけど、水嶋は俺に先に行ってとかって言うし、なかなか戻れなかった。

俺が水嶋に先に行けって言うと、やっと帰ろうとした。


最後にありがとうって言ってくれたんだ。


俺と話せてよかったって思ってくれたのか?

俺の方こそありがとう・・・。


水嶋の帰っていく後姿を見ていた。

だんだん、小さくなって見えなくなってしまった。


さっきまでここにいたのに・・・。


それが、遠い昔のことのように感じた。


あ~ぁ、俺も戻らないといけねぇな・・・。



「優士!!」


そんなことを思っていると、いきなり名前を呼ばれた。


「ん?」

俺の目線の先には、なぜか、ヒロがいた。


「ヒロ?
 ど~したんや?」

俺がそう言うと、ヒロはなぜかニヤッと笑った。

「俺、見ぃちゃった~!!」

何でか分からねぇけど、ヒロは笑ってた。


もしかして、見たって言ってんのは、水嶋と俺が一緒にいたことか?

ヤバイと思った。


水嶋は、誰にも知られたくなかったはず。


だから、俺は冷静なふりをした。

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