車輪の唄
線路沿いの上り坂は思っていた以上にキツく自転車は蛇行しながら登っていった。
僕は言葉も出せないほど力を入れてペダルに全体重をかけてゆっくりと漕いでいく。
「ヒロ君。もうちょっと、あと少しだよ!頑張って!」
背中から楽しそうな声が聞こえてきたが僕は言葉を出せなかった。
声を出した瞬間に力が抜けて自転車が倒れるとわかっていたから。
「この時間はやっぱり静かだね」
由香は、そう言った後、
「なんか世界中に二人だけみたいだね」と言って、
「このまま時間が止まればいいのに・・・」
ポツリとつぶやいた。
声は出せなかったけど僕も同じ事を考えていたんだ。
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