車輪の唄
駅には僕等と駅員以外は誰もいなかった。
「じゃぁ切符買ってくるね」
駅内のベンチに荷物を置いて由香は券売機へ向かった。
「あっ俺も行くよ。入場券を買わないといけないから」
「うん、じゃあ一緒に行こうか」
そう言って彼女は優しく笑った。

由香は券売機の一番端のボタンを押した。
「なんて名前の街だっけ?」
「セイテンインだよ」
由香は切符を見せた。
”晴天院”と切符に書かれていた。
「あーだから晴天学園か。由香の大学の名前」
僕は100円を入れて入場券のボタンを押した。
「今頃、気づいたの?」
由香は呆れた表情で言った。
由香と別々の切符を買うのは初めてで、いつもは、お互いの切符を交換していたのにもうそれが出来ないかった。
僕は入場券を由香と交換することなくポケットにしまった。
「・・・もう交換できないんだよね」
由香はさびしそうに言った。
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