DOLL・・・ ~秘密倶楽部~
エレベーターで地上へ出ると
さっきの場所とは違い
明るく綺麗なフロアが広がっている
「ここが事務所だ」
多くの人たちが
慌ただしく出入りしている
その場所へ飯岡が顔を出すと
飯岡を待っていたかのように
すぐにたくさんの人達が
飯岡の元に指示を仰ぎに来る
『飯岡さん、来週の撮影会の
衣装の件ですが...』
「ぁぁ、それは今日中に届くよう
手配済みだ」
『飯岡さん、グッズの
最終チェックが...』
「それなら今朝
先方に連絡を入れて了承済みだ」
『飯岡さん会場設営時の...』
「わかった。
それは俺が確認する」
代わる代わる飯岡に指示を
求め群がるスタッフ
飯岡はそれを的確に
難なく指示を与えて行く
ようやく自分のデスクまで
たどり着き、わりと本格的な
カメラを手に戻ってくると
「写真撮るから
そこに立て...」
そう言い
いきなりシャッターを
カシャ、カシャと切り始める
眩しいストロボの光に
思わず目を細める
「目を開けてろ
何だその顔...
そんなぶっちょ面で
指名が来ると思ってんのか?」
『DOLL BOOK』
レストランで言うなら
いわゆるメニューのようなものに
載せる写真らしい
カシャ、カシャ...と
シャッター音を響かせて
前、後、左、右とあらゆる角度から
写真を撮る飯岡
「みんなコレを見て
決めるんだ...
少しはいい顔しろよ」
カメラの画面から視線を外し
飯岡はあたしに笑顔を求める
コレで決まる...?
それなら...
とびきりのブサ顔で
指名なんて...
こなければいい...
それが...
今のあたしの本心だった
笑顔でポーズなんて
無理...
そこまでまだ...
自分を納得させていない...
こんなあたしは本当に
往生際悪くて
自分でも嫌になる
あんなに考えて
この方法しかないと
決心したはずなのに...
それなのに...
指名を取る為の
笑顔一つ作れないなんて...
本当、このままじゃ
あたしは一生、借金も返せず
最悪な無限ループの中で
あがき続ける..のかな...