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その頃、桜はというと自分のかばんをごそごそとあさっていた。


その中から、一本の輪になったロープを取り出した。


ちょうどそのとき、倭たちが荷物をつめ終わって部屋から出てきたところだった。


倭が桜の手にしているロープを見て首をかしげる。


「そのロープで何しようとしてるんだ?」


思わず口に出してしまう。


桜はその反応を予測していたかのように、言葉を返す。


「何も心配はいりませんよ。目をつぶっていればあっという間につきますから。痛くもかゆくもありませんから。ただ・・・」


「ただ、なんです?」


今まで事の成り行きを見守っていた響が桜に問う。


「時々時空酔いする方がいるんです。ですが何とかなるでしょう」


「・・・何話してるかぜんぜんわかんねぇんだけど・・・」


二人が倭を見る。そしてお互いの顔を見て、はぁ、と盛大なため息をついた。


「・・・まぁ、なるようになるんじゃない?」


と響。続いて、


「そうですよ」


と桜。


倭はこのとき、この二人にはついていけない、そう思った。


どこまでも鈍すぎる倭と、カンがいい響が桜とともにリビングから消えたのは、この話の十分程度後のことであった。




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