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倭と響
「倭起きなよ。もう昼過ぎだよ」
そう声をかけられて、寝返りをうちしばらく考える。
今ここには自分しかいないのに声がするのはおかしい。
では誰の声だ?こんな言葉を自分に投げかけるのは一人しかいない。
しかし、その本人は合宿に行ってるのではなかったか?そう思い至り、ベッドから飛び起きた。
「起きるの遅いよ。早寝早起きだっていつもいってるだろ?」
倭は理解できないといった顔で自分と同じ端正な顔を見つめて言う。
「おまえ合宿じゃなかったっけ?」
「昼帰るって言わなかったっけ?聞いてなかったのぉ?」
一瞬、響のメガネが光る。ここが唯一外見で二人を見分けられる部分(ポイント)だ。
「わりぃ。ぜんぜん聞いてなかった」
悪気なく、倭は言う。
「まったく。昼飯の仕度するから、着替えてきてよ。そんな格好じゃお客さんの前に出れないだろ?」
呆れ顔の響がいう。
「客?」
まるで知らない話が、飛び込んできた。その意外な反応に響が聞き返す。
「そう。帰ってきたら玄関の前にいた。倭の客でしょ?」
「俺は客なんて呼んだ覚えはないぞ?」
「じゃあ、あの人は誰なのさ?倭さんいますか、って聞かれたんだよ?」
「呼んだ覚えはない」
きっぱりと言い張る。本当に身に覚えがないからだ。
「ふーん。ともかく着替えて、昼にしようよ。話はそれからでもいいでしょ」
そう言って、響はキッチンへと足を向けた。