短編置き場・2
 小高い芝生の丘の上にふたり、男と女が腰を下ろして空を眺めていた。

色濃く青い空がちぎれちぎれの雲を浮かべている。

「なんだか、こうしてゆったり時間を過ごすのも久しぶりな気がする」

振り向いてはにかんだ笑顔を見せる女に、男は相変わらず空を眺めたまま、

「そうだね。あの頃の僕らにも、空を眺めて楽しむくらいの余裕があったらよかったのにね」

気のない返事をした。
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